川湯ばやしの歴史
川湯神社例大祭をはじめ、様々な場面で披露されている「川湯ばやし」。しかしその起源は弟子屈ではなく福井県の織田町(現:越前町)の「明神ばやし」にありました。ここでは「明神ばやし」をどのように移入し、現在の「川湯ばやし」になったのかを解説します。
1.川湯ばやしの起源
初めての川湯ばやしの披露はいつ?
今から約50年前の昭和47年(1972)6月17・18日、第20回「白ツツジ祭り」が開催されました。この時初めて「川湯ばやし」が披露されたのです。
「川湯ばやし」は現在様々なイベントで披露され、弟子屈町の人々に親しまれていますが、一体どのようにして行われることになったのでしょうか。
ここでは「川湯ばやし」の起源を探っていきます。
「川湯ばやし」が初めて披露された第20回白イソツツジ祭り
2.福井県越前町(旧織田町)の「明神ばやし」を移入
新たな観光資源を求めて
1970年代当時の弟子屈町川湯地区は「温泉と自然」が中心であり、他にも何らかの観光資源を欲していました。そのため当時の川湯温泉観光協会の人々は、明神ばやしに注目することになります。しかし本町と旧織田町は何のゆかりも無いため伝承には困難が伴いました。
「明神ばやし」とは何か
「川湯ばやし」は織田一族の発祥の地である福井県越前町(旧織田町)の「明神ばやし」を移出してもらったものです。
明神ばやしは江戸時代初期から伝わる郷土芸能で昭和46年(1971)4月16日には県の重要無形民俗文化財に指定されています。
神事を移出してもらうための陳情
明神ばやしは、劔(つるぎ)神社に奉納されている芸能のため、とても大切な神事です。そのためおいそれとは移出してもらうことはできませんでした。
川湯温泉観光協会の人々は何度も現地に赴き陳情を重ねます。その熱意が通じ、昭和46年(1971)9月、県文化財の移出を承諾してもらったのです。
「明神ばやし」を会得するための努力!
昭和46年(1971)11月中旬、福井県の保存会員たちが川湯を訪れ、地元の若者に明神ばやしの特訓を行い、バチさばき、身振り、リズム、笛などを仕込んでくれました。川湯にも保存会が結成され、白ツツジ祭りで初披露することになりました。
この様子は昭和47年(1972)1月15日の『北海道新聞』朝刊【釧路管内版】(釧路市を除く釧路管内で発行)でも取り上げられ、「あすをひらく-8- 郷土芸能に打ち込む 川湯ばやし保存会」という記事になっています。

福井県の重要無形民俗文化財「明神ばやし」
3.「川湯ばやし」の誕生
昭和47年(1972)「第20回白イソツツジ祭り」
昭和47年(1972)に開催された第20回白ツツジ祭りは、昭和26年(1951)に弟子屈観光協会から分離独立した川湯温泉観光協会の20周年記念行事でもありました。この呼び物となったのが福井県から移入したばかりの明神ばやし(川湯版)だったのです。
「明神ばやし」から「川湯ばやし」へ
明神ばやしが川湯ばやしとして生まれ変わるには、独自性が求められました。保存会は小学生に徹底的に型を教え込みますが次第に即興的な演奏となります。川湯ばやしは軽さとユーモアに独自性があり個々人が自由に演じる所が持ち味です。
現在の川湯ばやし
「明神ばやし」の導入後、人々の努力により「川湯ばやし」は様々なイベントで披露されました。川湯神社例大祭だけでなく、総合文化祭、新春感謝祭、観光列車モニターツアー、ダイヤモンドダスト in KAWAYUなど色々な場面で重要な役割を果たしています。
令和5年(2023)現在でも、脈々と川湯ばやしの伝統は続いております。皆さんもぜひ「川湯ばやし」を見る機会があったら先人の努力に想いを馳せてみてください。
川湯神社例大祭における「川湯ばやし」の披露
参考文献
更科源藏編『弟子屈町史』弟子屈町役場、1949
「あすをひらく8 郷土芸能に打ち込む川湯ばやし保存会」北海道新聞釧路管内版(釧路市を除く釧路管内で発行)、1972年1月15日、14面
「18日から「白ツツジ祭り」川湯温泉 呼び物は明神ばやし 野鳥探勝、郷土だいこも」北海道新聞道東版、1972年6月1日、15面
「川湯ばやしも初公開 にぎわった白ツツジ祭り」北海道新聞釧路根室版、1972年6月19日、12面
『広報てしかが』昭和47年7月号、弟子屈町、1972年
弟子屈町史編さん委員会編『弟子屈町史』弟子屈町役場、1981
弟子屈町商工会編『弟子屈町商工のあゆみ』弟子屈町商工会、1981
種市佐改「川湯と屈斜路カルデラの歴史」『新・美しい自然公園3阿寒国立公園川湯』、財団法人自然公園美化管理団、1987
弟子屈町編『弟子屈町100年記念「風・人・大地」』弟子屈町、2004
弟子屈町ほか編『郷土学習シリーズ7 川湯』弟子屈町教育委員会、2012
『広報てしかが』平成27年10月号、2015
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弟子屈町教育委員会 社会教育課
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更新日:2023年09月08日